【最終更新日2018/1/14】
国土交通省は賃貸物件のサブリース契約に関する法改正を決めました。サブリース契約は長い期間家賃保証をしてくれて、長期間安定した賃貸経営ができる商品ですが、実際にはそんなうまい話しはないのです。残念…。今回の法改正は、サブリース契約に関する苦情が多いため、法改正に至ったのです。
賃貸物件のサブリース契約とは
賃貸物件のサブリース契約とは、借り上げとも呼ばれますが、賃貸物件を「転貸することを目的として」賃貸借契約を結ぶことを言います。
簡単に言うと、毎月一定額の賃料で法人(不動産会社)が借りてくれるのです。そして、その法人が賃貸経営を貸主代理として借主(入居者など)に貸す仕組みのことです。
転貸とは又貸しのことですね。
オーナー様のメリットとしては、貸主としての権限を譲渡してしまいますので、賃貸経営をしなくていいのです。
オーナー様は賃貸物件の所有者ですが、賃貸物件の経営は不動産会社(サブリース会社)が行うのがサブリース契約です。
また、空室時の家賃減収リスクも貸主代理である法人(不動産会社)が負いますのでオーナー様は安心です。
デメリットとしては、自分で賃貸経営をするよりも大幅に安い賃料で法人(不動産会社)へ賃貸しますので、収入はものすごく少なくなります。
・通常賃貸 自分で賃貸管理をする 賃貸収入が大きい
・サブリース すべて業者へ任せる 賃貸収入が少ない
一般的なサブリース契約
サブリース契約で多いのが、建設会社の子会社である不動産会社と契約を結ぶことです。
建設会社としては、建築を受注して、建築の収益だけではなく、その後の賃貸運用からも収益を得るためにサブリース契約を提案します。
積水ハウスや大和ハウス、大東建託、旭化成、レオパレスなどが30年一括借り上げなどと広告しているのが一般的なサブリース契約になります。
そのほかに、大手賃貸チェーン エイブルやミニミニ、アパマンなどもサブリースをしていますが、この場合は賃貸経営を自分でしたくないオーナー様の代わりに10年程度のサブリース契約を結ぶことが多いです。
サブリース契約の問題点
今回、国土交通省が法改正をするのは「リスクをしっかり伝えろ」という部分です。サブリース契約をするときは20年、30年という長い年月の契約になります。
そのため、リスクの説明をすることは重要なことです。しかし、現状では「小声でリスクの説明」をしているだけで、あとは30年間一定の賃料でサブリース契約しますといううまい話しの部分ばかり強調しているからトラブルが増えるのです。
実際には、建物は毎年古くなり、周辺環境は変化して、景気などの経済状況も変わります。
サブリースを開始した時点では、サブリース会社が想定した賃料で貸し出すことができたとしても、10年後にその賃料を維持できるかは不明です。
近くに新しい賃貸物件が建築されたり、周辺の大学が移転してしまったり、景気が悪化して家賃が下落したりします。
そうすると、サブリース会社は大赤字になってしまいますので、サブリースした賃料の見直しを行います。
ここがサブリースの怖いところです。サブリース契約は20年、30年の契約ですが、契約書に小さく、毎年又は数年ごとにサブリース賃料の見直し、改正があると書いてあるのです。
これを十二分に説明して署名、捺印でも貰っておけばよいのですが、ここを説明してしまったら、ただでさえ、安い賃料のサブリース契約を結ぶ人が少なくなってしまいます。
また、このサブリース賃料の見直し、改正はサブリース会社にとっても収益拡大のチャンスです。
サブリース賃料の見直しをする専門の部署や担当者を設置して、いろいろな理由をつけてオーナー様へサブリース賃料の減額交渉をします。
賃料見直し部署、担当者は、サブリース賃料を値下げして得た利益で社内評価され、賞与などが決まるため、ものすごく真剣にいろいろな理由をつけて値下げを要求してきます。
これがトラブルの原因です
賃貸物件を新築して、サブリース契約を結ぶときは30年長期保証しますよと言っていたのが、数年後にはすごい剣幕で保証された収入の減額交渉をされるのですから…トラブルになりますよね。世の中うまい話しはありませんね。
また、サブリース契約のもうひとつの問題点として、サブリースする賃料の説明の仕方があります。
不動産会社の説明では相場賃料の90%でサブリースしますとよく言いますが、相場賃料がとてもあいまいなのです。
あいまいな場合は不動産会社にとって都合のよい賃料になります。賃貸物件は古くなれば家賃は下がりますので、30年保証であれば、契約した後の10年後、20年後、30年後の賃料まで想定して賃料査定をします。
そのため、相場賃料の90%と言っておきながら、実際にはその時の周辺相場賃料の60%~70%程度でサブリースを行うのが一般的です。
自分で賃貸経営するば年間1000万の家賃収入があるのに、サブリースにすると年間600万~700万しか収入がありません。
ただし、空室時の家賃減収リスクはサブリース会社が負いますので、もし、長期空室になったとしてもオーナー様はサブリース契約通りに年間600万~700万の収入を得ることができます。
ただし、相場賃料よりも大幅に安い賃料でサブリースしたとしても、それが30年保証してくれるのなら…まぁ我慢もできるのかもしれません。
しかし、残念ながらサブリース契約を結び、数年後には激しい賃料交渉をされてしまいます。
サブリース契約の限界とこれからのサブリース契約
現在のサブリース契約は、オーナー様が賃貸経営するのと、サブリース会社が賃貸経営するのと内容はまったく同じです。
入居者の管理や家賃の回収、解約時の対応などの管理をサブリース会社がやるだけです。そのため、サブリース賃料をよほど安くしないと、サブリース会社は儲からないのです。
だから、サブリース会社は最初は30年一括保証といって契約をしておいて、その後、賃料減額交渉を繰り返し行うのです。
結論から言えば、賃貸物件のサブリース事業に限界がきているのです。しかし、時代は変化してサブリースした賃貸物件を通常賃貸以外で使う不動産会社が増えてきました。
通常賃貸ではなく、トランクルームやウィークリーマンションなどに利用して、積極的に収益を増やすのです。
こうすることで、無理に賃貸オーナー様から収益を得る必要がなくなりますので、無理なサブリース賃料見直しをしなくてよくなります。
ひとり社長は一足早くハイブリッド賃貸でサブリース物件の運用を始めています。
まとめ
サブリース契約は良いところばかりを説明されて契約するから、あとで騙されたとなるのです。
世の中うまい話は絶対にありません。特に「行きはよいよい、帰りは恐い」です。最初はものすごくいい話ですが、だんだん雲行きが怪しくなって、最後は恐くなるのです。
今回の法改正によって「帰りは恐い」の部分を説明しろ!ということになります。たぶん、説明書類の作成と署名、捺印の徹底がされるのでしょうけど、その部分は不動産会社としてはあまり説明したくない部分です。
サブリース契約は相続対策や税金対策として賃貸物件を所有するには良い方法だと思います。収益は少なくても丸投げできますので、手間がかかりません。
ただし、サブリース賃料の見直しで税金の支払いが赤字になるようだと困ってしまいます。そんなときはサブリース契約も解約することができますので、途中解約も検討してみるといいと思います。
以上、サブリース契約の問題点!長期保証には気をつけろ!でした。